けものつれづれ

けものなるままにひぐらし

君は500円フィギュアの裏側を見る。~「minimum factory かばん&サーバル」レビュー②~

 

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前回紹介した「minimum factory かばん&サーバル」レビュー①の続きをやっていきます。

 

先にこっちをCheck it out!

ironyart.hatenablog.com

 

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前回のあらすじ、凄いプラモデルだった!

 

※ 先に買ってから読みましょう。いいですね?



1:サーバルの服は白?

 

 まずはパーツの切り出し。

準備するものはこちら。

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一応この辺揃えておきましょう。

ニッパー、デザインナイフ、瞬間接着剤、プラモ用接着剤。黄色いのは替刃です。

 筆とマスキングテープは後述します。

ゴッドハンド アルティメットニッパー5.0 プラモデル用工具 GH-SPN-120

ゴッドハンド アルティメットニッパー5.0 プラモデル用工具 GH-SPN-120

 

 まぁ一応一番良いのはこれですがぶっちゃけ切り出すだけなら600円くらいのニッパーで十分です。

 

 ただしデザインナイフだけは絶対にこれにしておきましょう。

 

 セメント(プラモを溶かして固める接着剤)はこれがオススメ。メチャクチャ硬化速いです。時間をお金で買いましょう。

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パチンと切り取りましょう、これを楽しめるかどうかでプラモ作りは変わってきます。

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そしたらこんな余分な所ができますよね。

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それをデザインナイフで丁寧に削ぎ落としていきます。えぐらないように!

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最後はナイフを垂直に立てて、カンナをかけるように削ります。これで大体OK!

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はい、パーツの切り出し完了!次だ次!

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パーツはとても小さいので、こうやって箱の中に入れておきましょう、それでもなくすときはなくしますが。

そして、説明書どおりに組み立て……てはダメ!
勿論説明書どおりに組み立てれば、もちろん形は出来上がります。しかし、塗装の事を考えると、説明書どおりに組み立ててはいけない部分が存在するのです。
プラモデル歴が長い人はだいたい勘でそういう部分が分かるのだが、初心者にはなかなか難しい部分なので。慎重に仮組みを行っていきましょう。

 

今回は一箇所を加工。

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サーバルのつながっている二の腕のパーツを中央で切ります。

この時、センターバーの一部が膨れているので、そこも削り取っておきましょう。

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このプラモデル唯一の合わせ目。消しましょう。

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2つのパーツ合わせたら接着剤の筆先を合わせ目にそって流して、押し付けます。

すると、合わせ目でパーツどうしの継ぎ目が「ムニュッ」と盛り上がるので、乾燥後、デザインナイフで削り取りましょう。

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仮組み、ダボがしっかりしているので接着剤はつかわなくてもいいです。

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一部ドリルで軸打ちをして組み合わせた状態。接着剤はまだ使わないように!

で、ここまで来て、私達は気づきます。「色分け済み」とは名ばかりである事を。塗装前提の商品であることを。

「・・・ちくしょう!騙された!」

 

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コノハ博士並の外道

 

しかも、このプラモデルのいやらしいところ……それは

「白パーツが白くない」ところなのです。

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白に見えますか?水色に見えますか?

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ウッ・・・頭が

言ってみれば「ジムホワイト」とも形容できる色味なのです。

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説明しよう!ジムホワイトとは、HGジムの「白」の部分に使われた微妙な青みがかった成型色のことである!

しかし!

実はこの「ジムホワイト」、そう的外れな成型色なのではないのです!

 

お手持ちのけものフレンズ オフィシャルガイドブック プロジェクトの軌跡」を確認して頂きたいと思います。

けものフレンズ オフィシャルガイドブック プロジェクトの軌跡
 

 そこには、吉崎先生による各世代サーバルの容姿の違いが描かれています。

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お分かりいただけたでしょうか?

第?世代の服は、明らかに第一、第二世代の服とは異なる色味で描かれているのです。

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紛れもない、「ジムホワイト」

そして、それはたつき監督のCGモデルでも同じ色。

少し青みがかった白ーー”ジムホワイト”。

それこそ、第?世代サーバルの服と靴の色なのです。

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ね、本当でしょ?

というわけで、目立つ胴体と靴にこの色を採用したのも、決して的外れな判断ではないのだと、私は思います。

このように、組み立てたり、塗装することを通じて、そのキャラクターの「本当の色」を把握出来るというのも、プラモデル制作における楽しみだったりします。

 

……まぁ、それでも、明らかに「ジムホワイト」ではない腕パーツまで「ジムホワイト」で成型してしまう所はツメが甘いと言えなくもないですね……(おかげで塗装しても下から青色が浮き上がってきて大変でした)

うーん、やっぱり普通の白で成形してください!MAX Factoryさん!(結局こうなる)

 

2:最新アイテムで気楽に塗ろう!(気楽に塗れるとは言ってない)

 

さぁ、素組派にとって最大の関門である「塗装」に入ります。

しかし心配は無用です!

なぜならわれわれには3つの秘密兵器があるのですから!

 

その一

「イージーペインター」

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梨汁だって噴射できるぜ!

 

ガイアノーツ イージーペインター 塗装ツール 80ml EP-01

ガイアノーツ イージーペインター 塗装ツール 80ml EP-01

 

 

これは簡易エアブラシのような代物で、ボトルの中に任意の塗料を入れることで、簡単にスプレー塗装が出来る素晴らしいアイテムです。

そして、我々は危険なシンナーやめんどくさい調色を行う必要もないのです!

なぜならば!

 

二つ目

「ファレホカラー」

があるから!

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今回塗装に使用したのはたったの4色!

www.volks.co.jp

 

このファレホカラー、溶剤は「水」なので安心安全。シンナー特有の臭いもしません。

そして塗りムラも全く起きないという高性能。乾燥してもアルコール溶剤で簡単に剥がす事もできるので、何度でもやり直し可能!

色の種類も沢山あるので、きっとぴったりの色が見つかるはずです。

 

 

今回使用したのは

 

白:ゲームエアーシリーズ「デッドホワイト」

(筆塗りも考えて同時にゲームカラーシリーズの「デッドホワイト」も買っておくといいでしょう)

サーバルの本体色:ゲームエアーシリーズ「サンイエロー」

かばんちゃんの赤色:ゲームエアーシリーズ「ゴーリーレッド」

サーバルの斑点やかばんちゃんの靴:モデルカラーシリーズ「チョコレートブラウン」

 

の4色だけ、余裕があればかばんちゃんの袖ラインや髪の毛のための紺色を一本買っておくのもいいでしょう。私は成型色そのままですが。

 

そして、このファレホカラーのキャップが黒いものは、専用アダプターをつける事で、イージーペインターに装着することが出来るのです!

 

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これを使えば…



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こうなります、色を変更するときは、アルコールでノズルやアダプターをちゃんと洗浄しましょう。

 洗浄用のアルコール溶剤はこれを使いました。布に付けてこすりましょう。ボロボロ落ちます。

 

基本はこの2つを使って塗装していきます。

パーツに持ち手を付けて、イージーペインターで吹付け。

一回で塗ろうとは思わず、2回、3回吹付けて塗料がダレないように気をつけましょう。

腕などの白とオレンジのパーツは、先に白を塗装してから、マスキングテープで塗りたくない所を保護した上でオレンジを吹き付けます。

 

このへんは検索すれば簡単に講座とかが出てくるのでそれを参照して下さい(丸投げ)

 

細部の塗装は、基本的にこのような筆で行っていきますが

タミヤ メイクアップ材 モデリングブラシHFスタンダードセット 87067

タミヤ メイクアップ材 モデリングブラシHFスタンダードセット 87067

 

 

絶対にこれでは塗装不可能な部分が存在します。

それがこの斑点模様やボタンやベルトの塗装。

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できそうだと思うでしょ~?

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じゃじゃん!

どうでしょうか?

一番小さな斑点は1mm以下です。

どんな細い筆でもこれを正確に打つのは難しいでしょう。

 

しかし、とあるモノを使うことで、これをある程度簡単に塗ることができます。

 

それこそが3つ目の秘密兵器

 

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爪楊枝

 

この爪楊枝の先端をデザインナイフでピンピンに尖らせて、塗料を付け、そして息を止めて狙ったところに押し付けることで、このように小さな丸い点を打つことができます。

 

斑点が大きいところは削らずに塗ったり、輪切りにして塗装面積を増やして塗ったり、ななめに切って楕円に塗れるようにしたり。工夫しだいでどんな斑点でも塗れます。

 

失敗したら水かアルコールをを付けた爪楊枝で削り落としましょう。

 

めっちゃ真剣だったので写真はありません。悪しからず。

 

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爪楊枝は他にも……パーツの組み合わせたら隠れる部分にこうやってピンバイスで穴を空けて

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爪楊枝をぶっ刺して、塗装のための持ち手にすることができます。

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デビルマンのあのトラウマシーン

塗装が終わり、デカールを貼って、つや消しのクリアースプレーを吹き付けて…

GSIクレオス Mr.トップコート 水性 つや消し スプレー 88ml ホビー用仕上材 B503

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こんな感じになります。

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 接着剤でくっつければ、完成です!

(接着面の塗料はナイフでこそぎ取っておきましょう)

 

それでは何枚か、どうぞ。

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みんみ様のおな~り~

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どこから見てもみんみしているの本当に完成度高いです。

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このへんは私のなわばりなんだよ!

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ちょっとのけぞり気味なのがかばんちゃんとの対比になっているのもGOOD

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バックからは、スカーフや腕の模様の細かさが映えます。

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ブルーバック加工してみんみ教合作に使ってもいいよ。

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パンツは白、ちなみに第2世代サーバルのパンツは黄色に斑点です。ウィクロスの描き下ろしイラストを見ましょう。

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大きい10円玉だなぁ……(白目)

3:このプラモデルは、挫折してもいい。

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いかがでしたか?


と、デスマス調で簡単に制作工程を書いてきたが、

 

これを完成させるのは、正直、めちゃくちゃ難しいし、面倒くさい。

 

でも、私は一人でも多くの人にこのキットを組んでみて欲しいと思う。

メチャクチャになってゴミになってしまったとしても、このキットを組んで見ることで見えてくる世界があるからだ。

 

このプラモデルの設計は、完全に、「完成品フィギュアの製造」そのものをモデルに構成されている。

それは担当者のインタビューからも明らかだ。

 つまり、結局これってプラスチックモデルと言えばプラスチックモデルなんですが、どちらかといえばPVC製フィギュアを無理やりプラスチックで成形して、皆さんに”これはプラスチックモデルなんだ”というように認識していただくための様式美としてわざわざランターを付属させているんです。なので我々の感覚としては”小さなPVCフィギュアをプラスチックで整形しているだけ”というものに近いんですよ。

 

だから、”ほら、よくよく見ていくとPVC製フィギュアとパーツ構成が同じでしょ?”と言われると、”……あ~、なるほどね~”という感じになる人もいると思うんですが、ただし一般の方はパーツに一本の棒が付いただけの、バラバラの状態でのPVCフィギュアを見る機会なんてないじゃないですか。だからそこに気づいてもらえない。

(引用元)

レプリカント EX5 (Bamboo Mook)

レプリカント EX5 (Bamboo Mook)

 

 

つまり、私達が行う、パーツを切り出し、成形し、塗装し、組み立て、完成させるその行為。

それは完全に、中国やベトナムや、あるいは鳥取の工場で昼夜行われている完成品フィギュアの製造工程そのままなのである。

 

そして、我々はこの商品名の真の意味に気づく。

 

「minimum factory」

     小さな      工場

 

そう、これを組み立てている時、

あなたの家は、机の上は一つの小さな完成品フィギュアの製造工場になり、

あなたはその工場のただ一人の従業員になっているのだ。

 

これが何を意味するのか。

 

それは、

あなたがこのプラモデルで味わう苦労は。

あなたがこのプラモデルで掛けた時間は。

 

 

 あなたが一万円で予約する完成品フィギュアのパーツを切り出した人たちが

 

あなたが3000円で購入する可動フィギュアを整形した人たちが

 

あなたが1000円でゲットするプライズフィギュアを組み立てた人たちが

 

 あなたが500円で回すガチャポンフィギュアを塗装した人たちが

 

味わってきた苦労であるということ。

かけてきた時間であるということ。

 

それを自覚した時、プラモデルの新たな側面をあなたは見るはずだ。

 

現実のものづくりの体験学習としての側面。

 

私達がこのプラモデルを十分満足するクオリティまで制作させられるかどうかは分からない。

大体の人は、きっと500円のガチャポンフィギュアよりも低いクオリティで折り合いを付ける事になるだろう。

 

だが、その時私達は思い知る。

 

私達が普段あたりまえに享受しているモノの裏側には、信じられないほどの技術と、人と、お金が関わっているという事に。

そして。

その集大成が、たったのワンコインで買えてしまうという異常性に。

 

あなたはこのキットを通じて、500円フィギュアの裏側を覗き見ることになるだろう。

 

組んで、

塗って、

完成させて、

そして……戦慄せよ。

 

その時の激しい情動はあなたに、「どんなモノにも、それを作った人がいる」という事実を嫌というほど突き付けてくるだろう。

そして、その事実の自覚は、大量消費社会の中であなたをしっかりと支える礎になるはずだ。

 

それこそが、このプラモデルの真の”完成”である、と言えるのかもしれない。

 

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それでは、一足お先に机上のジャパリパークで待ってます。

 

おまけ

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